野村牧場の5つの選択
作り手、買い手、牛、地球環境。すべての幸福を追求した結果、野村牧場が辿り着いた『5つの選択』をご紹介いたします。
1.『循環型農業』という選択
循環型農業とは?
化学肥料や農薬などに頼るのではなく、畜産業や農業、工業などから出る廃棄物を肥料として再利用する農業のシステムです。
本来なら捨ててしまうような資源を循環させて新しい命を生み出すことから、環境保全に貢献する取り組みとして注目されています。
野村牧場の循環型農業
野村牧場の牛舎は下野市の水田地帯にあります。元々は牛の飼料である藁と農作物の肥料になる牛糞堆肥を交換することで、お互いに助け合ったのが始まりです。当牧場から出た堆肥は、地域の野菜畑や水田などに使われ、牛糞堆肥を使った野菜は美味しく大きく育ちます。
直売部隊 隊長♪
当牧場では野菜や米も育てています。
先代の野村守は牛だけではなく野菜作りも得意で、なかでも『とうもろこし』は柔らかく旨味も強く絶品!味の良さから、すぐに予約完売するほどです。
地域の米農家さんと連携
地域の米農家さんたちの稲刈りが終わり、田んぼに残された藁が乾いたら、牧場の面々で一斉に藁を回収しにいきます。一年分の牛の粗飼料となる藁を集める、年間で1番の大仕事です。米農家さんたちが次の作物を作る予定に合わせて、素早く藁を引き上げていきます。
ノムラブレンドとは?
ノムラブレンドとは、野村牧場が20年以上前に独自に考案し、今も牛に食べさせている秘伝の家畜飼料です。主原料はとうもろこしで無駄脂が出ません。また飼料の中に米を数パーセント入れることで、肉に甘みが出ます。このノムラブレンドを主食の稲わらに加えることで栄養価が高くなり、牛が800~1000㎏ととても大きく育つのです。
生まれてから4ヶ月程度までを『哺育期間』、離乳して生後12ヶ月までを『育成期間』、生後約27ヶ月までを『肥育期間』と言います。ノムラブレンドは主に『肥育期間』にあげるエサです。
ちなみに『哺育期間』中は手作りのミルクを機械ではなく、すべて手作業で牛に飲ませています。多くの牧場では生後半年程度から育てるケースが多いのですが、野村牧場では生後半月から一ヶ月程度生まれたてに近い牛から育てているので、牛が人に懐きやすいのです。
さらに食べ盛りの『育成期間』では、高品質のチモシー(乾草)をあげています。緑色で香り高いチモシーは栄養価が高く、牛の嗜好にもぴったりです。その他、大豆や砂糖きびなどを原料にした発酵飼料も与え、たんぱく質や食物繊維などを補うことで栄養バランスが偏らないよう配慮しています。
2.『F1牛』という選択
交雑種 (F1牛) とは?
ホルスタイン種やジャージー種などの雌の乳牛と、黒毛和種の雄の肉牛との間に生まれた牛のことを言い、F1牛 (一代雑種牛) とも呼ばれます。
他にも肉用牛の交雑種としては、肉専用種の純粋種同士を交配させる「和牛間交雑種」と、肉専用種と乳用種 (ホルスタイン種以外) を交配させた「交雑種」があります。
交雑種 (F1牛) のメリット
- 生産コストの引き下げ
- 肉質の向上
- 粗飼料の利用性に優位
交雑種は生産コストを引き下げ、 肉質の向上を目的に交配させた品種です。 肉専用種よりも早く大きくなるため、粗飼料の利用性にも優れています。先代から農場を引き継いだときに品種を変えることも可能でしたが交雑種の合理性に着目し、当牧場では現在も交雑種を選んで飼育しています。
直売部隊 隊長♪
創業当時はホルスタインという乳用種を肉牛として飼っていましたが、乳を出す牛の肉は脂肪交雑が入りにくく乳臭い。そんな矢先に先代が交雑種 (F1牛) の存在を知り、興味を持ち始めました。そこから交雑種の飼育に切り替えて餌の給与量や質、飼育方法を猛勉強。その結果、牛の品評会で数々の賞を獲得し、「交雑種なら黒毛和牛と同じように育つ」という確信を得たのです。
また私たちが交雑種を選ぶもう一つの理由は、合理性があるからです。
酪農家は牛乳を作るために雌牛を出産させる必要がありますが、生まれてきた子牛は要りません。また肥育農家では肉を作るための交配を行いますが、出産事故が起きてしまうと商品となる肉を得ることができません。
乳牛は和牛に比べて体格が大きいため、交雑種を作るために乳牛の雌と和牛の雄を交配させるとお産が楽になり、出産事故のリスクを下げることができます。そして交配に乳牛の雄を使わないことで、酪農家の生産コストを引き下げることもできるのです。
このように交雑種を選ぶことには合理性があり、酪農家と肥育農家どちらにもメリットがあると言えます。
日本の安全基準
肥育ホルモン剤について
オーストラリア、カナダ、アメリカ、ニュージーランドではホルモン剤を認めていますが、日本では牛を大きくする肥育ホルモンは禁止されています。
牛のトレーサビリティについて
日本の牛は厳格に管理されて育ちます。トレーサビリティとは生まれた時にマイナンバーを与えられ、お肉になってもマイナンバーでどこで育ったのかがわかるシステムです。制度の詳細、検索サイトなどについて以下の農水省のサイトをご覧ください。
農水省のサイト https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/trace/
3.ストレスを極力かけない
『牛に優しい飼育方法』という選択
牛に優しい飼育方法とは?
牛も人と同じで、体調や機嫌が毎日変わる生き物です。牛舎の部屋を例に出すと、相性の良い牛同士を見極め、一緒の部屋で飼育するようにしています。そういったきめ細かい配慮が牛にとって健やかで過ごしやすく、ストレスが少ない環境へと繋がっていくのです。
そして牛に優しい飼育を実践し続けたことで、牛のストレスの大小がお肉の質に比例することがわかってきました。自分の子どもを育てるように、牛を大事に元気に育てあげる。それこそが、野村牧場が導き出し確立した『牛に優しい飼育方法』なのです。
直売部隊 隊長♪
先代は数々の栄誉ある賞を受賞した「牛作りの達人」として、栃木県内の肉牛肥育農家の間では有名人でした。美しいサシの入った色の良い肉は、まさに垂涎ものです。直売所を始めてすぐは、多くのお客様に買っていただきましたが、次第に販売は難航します。なぜなら、お客様から「見た目は良いけど味がイマイチ」「獣臭い」など厳しいお言葉をいただくようになったからです。どれだけ広告をしても、不味いとお客様は二度と来なくなる。
先代から牛作りを任されるようになった現在の社長にお客様の感想をストレートに伝え、牛肉の味への改良をお願いしました。見た目を捨て、味のみに執着をする。
食肉用の牛は成長過程で血液中のビタミン濃度を低く保つように調整します。ビタミンを限界まで低く保つと体内で赤身に脂肪交雑が出来ます。これをサシと言います。しかし、このサシを細かく入れる事が牛に多大なストレスを与え、肉の味に影響していると社長の野村晙元は考えました。見た目と味のバランスを探りながら餌の給与と飼育環境の整備を見直し、牛が元気に心地よくゆったりと育つようにあれこれ試行錯誤しながら飼育方法の改善を試みたのです。
その結果、直売所で販売されたお肉のファンが増え、野村牧場の名前が口コミで広まり、直売所はみるみる繁盛し始めたことで「街の美味しい牛肉専門店」と言われるようになりました。
4.『食品ロス削減』という選択
独自の切り方を確立
直売所を開店した当初から、野村牧場は『食品ロス削減』に取り組んでいました。それは「大切に育てた牛の肉を少しでも多く、1gでも余すところなく売るにはどうしたらいいのか?」という思いからでした。そこで私たちは長い年月をかけ、肉の切り方を既存の方法ではなく独自の方法に切り替えたことで、今では過去よりも無駄なく多くのお肉を販売できるようになっています。
なぜ安いのか?
お肉の販売価格を決定するポイントは形のある精肉として販売する量、いわゆる「歩留まり (ぶどまり)」です。焼肉用、すき焼きしゃぶしゃぶ用スライス、ローストビーフ用ブロック、ステーキなど、これらをカットするときにクズ肉が出ないよう、細心の注意を払いながら計算してカットします。
厚みを揃える事は可能ですが、形を雛形のごとく均一にすると、その分精肉の価格が高くなります。なので、野村牧場のお肉はあえて不揃いなのです。「1gでも余すところなく売る」という思いによって行動したことが、結果的にお客様にお肉を安く販売できることへと結びつきました。
生産者が加工と販売をする。これはお肉への愛情とプライドが高い証拠です。野村牧場では味へのこだわりと多くの人に選んでいただける価格設定を行い、手間ひまをかけて育てた牛を最後まで大切にしています。「食品ロスの軽減は加工と販売をするお店から」を常に意識しています。
直売部隊 隊長♪
当直売所の肉のカット規格を納得していただける場合のみ、贈答品をお受けしております。当牧場では、贈答用だからといって値段を高くすることはありません。ぜひご利用していただき、お肉ともにSDGsの取り組みの一つ『食品ロス削減』の意識を、お相手の方へお伝えしていただければ幸いです。
5.『精肉は自社のお肉だけ』という選択
生産地・生産者・加工場が100%明確
野村牧場は栃木県から六次産業の認定を受けて営業しています。六次産業とは、原料の生産者が加工と販売を行う産業を指します。丸一頭を買い戻しするので、全部売り切るために自社製品の牛のみを扱うことにしました。
直売部隊 隊長♪
野村牧場で販売しているお肉は100%自社で生産し、加工をしているお肉のみです。お惣菜の玉ねぎは野菜のカット工場から国産玉ねぎみじん切りを買って使っています。ぜひ安心してお買い求めください。